ウクライナ侵攻

ウクライナ侵攻

ロシアが世界経済の真っ当な一員になったと自分に言い聞かせて、ビジネス優先でやってきたわけだろうけど
ここにきて、改めてロシアという国の指導者層がどのような人たちなのかを思い出すことになった。

 

NATOアメリカの介入がなければ・・・・

ウクライナは頑張って抵抗しているが、NATOが介入しない限り、かならずどこかでロシアとの停戦に(ウクライナの不利な条件で)合意することになるだろう。
ウクライナは越境してくるロシア軍を叩いているだけで、ロシア本土を攻撃する能力はないのだから、長期化すればもはや戦争とも言えない一方的な虐殺になる可能性すらある。
そして停戦合意の条件は、ウクライナにとってかなり譲歩したものになるだろう。
(あくまでも、NATOの軍事介入がなければ、という話。)

 

ロシアの利益になる終わり方をさせたくない

一方、ロシアの利になるような停戦条件で、この侵攻が終結することは
ウクライナだけでなく、NATO諸国にとっても受容しがたいものだろう。
ウクライナ侵攻でロシアが利を得ることが許されるなら、次はジョージアモルドバなどにも同じことをするだろうし
中国が周辺諸国の領土を侵食することのハードルもグッと下がるだろう。

 

国連での常任理事国の力関係というのは冷戦終結後、長らく西側が有利な状態が続いてきた、なんだかんだいって西側諸国の肩を持つ人の多い場である。そういう中で、ロシアや中国のような西側諸国とは大きく価値観の違う2大国が、ますます幅を利かせるような結果になってしまうのは、西側諸国には受け入れがたい。今回のウクライナ侵攻の収支がロシアにとってプラスになるような終わり方にはしたくないはずである。

 

ウクライナは耐えてチャンスを待っている

ウクライナにとっての頼みは、ロシアの攻撃に耐えて耐え抜いて、西側諸国の軍事介入を引き出す、というところにある。
ロシアとウクライナが戦い続ければ、少なくとも戦闘行為そのものでは最終的にはウクライナが負けるというのは、ウクライナ側もわかっていると思われる。
それが分かったうえで、ロシアの攻撃に耐えて耐え抜いているのは
政治的には、耐え続ければ、西側諸国が介入せざるを得ない事態に引き込めるハズ、という狙いがある。
国民心情的には、ロシアの政治体制を全く信頼しておらず、ロシアの属国として生きる人生に全く希望を見出せない、というところだろう。

 

西側諸国にとっては、心情的にはウクライナを救ってあげたいところだと思う。
しかし、打算的な視点でいうと、以下のような都合のいいことを理想としているだろう。

 

  1.ウクライナが音を上げる寸前まで頑張らせて、ロシアを消耗させたい。
  2.戦うのは嫌なので、ロシアが早く音を上げてくれると嬉しい
  3.ロシアが音を上げたのを見ても直ぐに許さないよ。じっくり灸を据えるよ。

 

ルールを破る、ということにかけてはロシアや中国のような全体主義国家は強い。


さて西側諸国は、停戦後もロシアに厳しい制裁を続けるために結束しつづけられるだろうか。
ロシアにエネルギーを依存してきた西欧が、停戦後のウクライナにどのような政権が誕生しても
ロシアへの経済制裁を続けられるものだろうか。

ロシアは西側諸国の制裁によって国民が困窮しても意に介さないだろう。
一方、西側諸国は困窮することに慣れていないし、西側の為政者は政権を維持する支持率を得るために、あれこれ努力する必要がある。
ロシアのように国民に困窮を強いることはできない。

西側諸国市民が多少なりとも困窮を受け入れつつ、制裁を継続し続けられるならよいが
「あらゆる物価が高くなったが、安全保障と西側諸国の結束のために我慢しよう」
と、為政者はどれほど市民を納得させ続けられるだろうか。

この点は現時点では西側諸国市民は、この負担を受け入れようとする気運があるようだ。しかし、影響が長引けば、西側諸国の結束に将来ヒビを入れることになると思う。

 

今のところ、西側諸国の結束は思ったより強い

当初、ロシアが予想していたより西側諸国の結束はかたいように見える。
これはロシア指導者層の価値観が、西側諸国の価値観とかけ離れていることを思い知らされたことによるものと思う。

しかし、ウクライナに武器を融通しつつも、NATOは飛行禁止区域の設定はしない、という点でまだ腰が引けている。

 

これはNATOアメリカは少し慎重に過ぎるように感じる。
現在も武器をウクライナに供給しまくっている時点で、すでにウクライナ代理人としたNATOとロシアの戦争である。
にもかかわらず、ロシアは西側諸国がおこなっている経済制裁を「宣戦布告に等しい」とはいうものの、「宣戦布告だ、NATOとの戦争だ」という言葉はいっていない。
ロシアはもともと安全保障を求めてNATOの不拡大を要求していたわけだけど、
ロシアがNATOに勝てるわけはなく、ロシアからNATOを攻撃する可能性は極めて低い。

ロシアがNATOに攻撃するとすれば、精神状態に問題があるのだろう。
だが、この言説すら「核を使うぞ」という脅しの強化のためにロシア側が流している可能性もあるのではないか。

ロシアはウクライナからは、ロシア国土への反撃はされない、と思っているから侵攻しているのであって、ロシアからNATOには侵攻しない。
その点を見越して、今後のロシアとウクライナの停戦交渉を有利にすすめる為にも
もう少しNATOアメリカはウクライナに肩入れする姿を見せておいたほうがよいのではないかと思う。「人道支援だ」と強弁しながら、Mig29をウクライナに供与すればよいと思う。

 

NATOや米は武力介入することになるだろう

西側諸国の武力介入なしに、この戦争が中露の損になる終わり方をするとは思えない。

西側諸国が結束して経済制裁を加え続けられるか不明だし、制裁の効果が本当に永続するのかもわからない。中露やその他インドやUAEのような西側諸国とは言えない国々との新しい経済関係によって、ロシアが命脈を保つ可能性もあるだろう。

 

NATOや米国が、戦闘機のような攻撃的な兵器のウクライナへの供与を避けている。

西側諸国としては、「ロシアとの戦争もやむを得ない」といえるほどのロシアによる戦争犯罪の発生をまっているのではないだろうか。おそらく、ウクライナに戦争継続のための支援を続けていれば、どこかでNATOと一触即発の事態になるだろう。ロシアが十分に疲弊し、かつ、西側諸国が戦争に介入するに値する理由の発生をまっているのではないか。

 

ほかにも人道危機はあったのに・・・

それにしても、これまでアメリカもロシアもアチコチで侵略戦争をしてきたわけだし、深刻な人道危機も無数にあっただろうが、西側諸国各国から見れば対岸の火事だったと感じていたのかな、と
思う。つまり、ウクライナの侵略がここまで大問題になっているのは、
・ロシアにとってもNATOにとっても近い国だから
・西側諸国、特にヨーロッパ諸国にとっては人種的・宗教的にも近い人たちの国だから
だということかなと思う。
これはある意味、差別的なことではあるが、紛争のイメージのある地域・国での人道危機には、これまでこのようなヒステリックな反応はしてこなかったと思います。